時代の変化やユーザーのネットリテラシーの向上により、モノやサービスの購入時における消費行動が変わってきています。自社の商品やサービスが売れている原因についてちゃんと分析をしているでしょうか。もし販売に不満や不足があるとしたら、消費者行動を理解したマーケティングをちゃんと理解できていない可能性があります。商品やサービスの売れ行きや消費者心理はフレームワークを用いることで把握する事ができ、売り上げ拡大につながります。今回は購買行動やそれについて過去から現代への移り変わりのフレームワークを紹介していきます。
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1.購買行動(プロセス)とは
購買行動とは消費者がモノやサービスを購入しようとする際の一連のプロセスを表したものです。人の趣味趣向などは多種多様ですが、モノを購入する際の行動パターンは似ていることが多く、その行動パターンを分析することで売り上げや成約率の向上につながります。近年ではインターネットの急速な発展により、オウンドメディアやSNSといったものを利用する消費者が増え、情報源や行動パターンが大きくウェブを用いたものに変化してきました。情報が溢れている環境下で消費者は情報を厳選して選ぶようになっているため、有益な情報の発信をすることによって消費者を惹きつける、自社メディアの保有やコンテンツマーケティングといった施策も登場しました。
消費者を引きつけ自社のファンにするには、消費者が何を考えてどういった行動パターンをとるのかを把握する必要があり、これらを分析するために様々なフレームワークや方法論が導入されています。購買行動に基づいてマーケティング施策を打ち立てることで、見込み客が欲しいものを適切なタイミングで提供することができるようになります。現代の消費者の購買行動パターンを知る事はどんなビジネスをする上でも、とても重要なプロセスになっています。
2.購買行動(プロセス)の種類
購買行動プロセスは時代とともに変化しています。ハガキや封書で手紙のやりとりを行なっていた時代から、電子メールの普及により人々のやりとりが当たり前にメールへ移行していったように、インターネットが普及する前と後では、人々の購買に対するプロセスも大きく変化していきました。そこで、インターネットが普及する前のマスメディア時代、インターネットが普及し始めたインターネット時代、インターネット上に情報が多くなり、消費者がモノ選びを迷うようになった現代をコンテンツマーケティング時代として3つの視点に分けて解説していきます。
時代 | 主要な購買行動モデル |
マスメディア時代 | AIDMA |
インターネット時代 |
AISAS、AISCEAS |
コンテンツマーケティング時代 | DECAX、Dual AISAS、Sips |
マスメディア時代(AIDMA)
マスメディア時代の購買行動のモデルとしてAIDMAというフレームワークがあります。これはAttention(認知)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)を表す頭文字で、
A:広告などで商品を知らない消費者に認知させる
I:知っているが関心がない人に対して興味を持ってもらう
D:興味はあるが欲しいと思っていない人へ価値に共感してもらう
M:商品を欲しいと思うが動機がない人に記憶してもらう
A:動機があるが商品を購入する機会がない人に購入してもらう
といった流れになっています。マスメディア時代では企業が消費者にテレビCMや新聞雑誌などの広告を用いて、なるべく多くのユーザーに向けて露出することで、良い効果を得ることができていました。しかし同じコミュニケーションを行った場合でも消費者の行動は変わってくるため、それぞれのフローで企業が取るべき必要なアクションがあります。
インターネット時代(AISAS、AISCEAS)
電通が考案した消費者の行動フローであるAISASとは、Attention(注意),Interest(関心),Search(検索),Action(行動、購入),Share(共有)を表す頭文字で、
A:広告やコマーシャル等で注目させる
I:認知したユーザーが興味を持つ
S:興味を持ったユーザーが情報を集めるためにインターネットで検索する
A:検索したユーザーが価値を感じて購買する
S:購買したことや使用に関する情報をブログやレビューとして拡散する
という流れになっています。
AISCEASはこれにComparision(比較)、Examination(検討)を加えてさらに細かくしたパターンです。流通するモノが多い現代では、同じ種類でも価格が低いものやデザインが優れたものなどと比較をする→その後に実際に購入するものを検討するというステップが加わります。
AISASやAISCEASは正しく利用することができると、購買したユーザーが新しいユーザーを連れてきてくれるようになるため、企業からしつこく追いかけなくても新規顧客が増えるような状況になります。
コンテンツマーケティング時代(DECAX、Dual AISAS、Sips)
DECAXとはDiscovery(発見),Engage(関係),Check(確認),Action(行動),Experience(体験共有)を表す頭文字で、
D:ユーザーが有益なコンテンツを発見する
E:発信者との関係を深める
C:ユーザーが発信元の確認をおこなう
A:ユーザーが商品を購入する
X:ユーザーが体験を共有する
という流れになっています。実際に目に見えるモノばかりが商品ではなくなった現代において「体験」が重要視されてきました。アプリや民泊などが体験型商品の代表例です。
Dual AISASとはAISASがAttention(注意),Interest(関心),Search(検索),Action(行動、購入), Share(共有)であるのに対し、Interest(共感を含んだ興味),Share(拡散),Accept(受容),Spread(拡がり)の事をいいます。「I」「S」「A」「S」と横並びにしたものに初めの「A」のAttentionが含まれています。AISASが縦に向かっていくものとして例えられますが、Dual AISASは横に広がるユーザー行動だといわれています。簡単に言うなら、AISASが購入に向かって縦にいくものだとするなら、Dual AISASは購入するモノやしたモノを横に広げ、それぞれの領域でユーザー同士がつながる行動をとります。
SipsとはSympathize(共感する),Identify(確認する),Participate(参加する),Share&Spread(共有、拡散する)の頭文字をとったものです。2011年に電通が提唱したSNSを頻繁に使用する層に向けてのものです。ユーザーはソーシャルメディア上における「いいね!」欲しさに商品やサービスを勝手に紹介してくれるようになり、ユーザーがいかに多く情報を拡散してくれるのかがポイントになります。これまでのAISASなどにとって代わるものというものではなく、今の時代の消費行動をよく表したフレームワークになります。
3.DECAX
昨今では企業の売り込み色が強いものやセール価格が表示された広告などは好ましくないと評価されることが増えており、企業側もそのような施策を敬遠するようになってきました。なぜなら、ユーザーは読んでいて役に立つものやおもしろいコンテンツから情報を得ることが多くなってきているからです。そのため、コンテンツマーケティングではDECAXが適していると言われています。DECAXは、ISASやISCEASなどと比較すると「Attention」と「Interest」が「Discovery」と「Engage」に変わっています。企業が商品を売りに行くのではなく、発見されてユーザーが自ら商品を探して購入するところにポイントがあります。このように他のフレームワークよりもユーザーが自発的に行動を起こすようになっています。
また、コンテンツマーケティングの普及により本当に良いものだけが売れる時代になってきています。その中で企業は自らが発信するコンテンツをユーザーに見つけてもらう必要があり、そこでDECAXを当てはめた戦略を練ることで、結果が出やすくなるのです。
4.DECAXで簡単なカスタマージャーニーを考えてみる
DECAXについてどのように考えていけば良いのでしょうか。例えば住宅メーカーAがDECAXを用いたフレームワークを行うとどのようなユーザー行動が行われるのか、具体的にみていきましょう。
D:子供が幼稚園に入り、そろそろ家を購入しようかなと考えている人がいます。その人は見込み顧客です。この見込み顧客はインターネット等で情報収集を始めているAサイトを発見します→Aサイトでは一戸建てとマンションとの比較を行い、家を買うならいつがベストなのかを考えます。
E:A社はSNSやブログで定期的に家に関する情報発信や次の行動に移らせるセミナーやCTAを行っています。それをみたユーザーは「なるほど。家を買うには考えることがいっぱいあるんだな。メルマガあるんだ。登録しておこう」というように企業との関係を深めていきます。
C:デザインやサポート体制など、より具体的なことがわかるぺージを閲覧します→「無料の相談会があるんだ。参加してみるか」とユーザーによる内容の確認が行われます。
A:購入した人の生の声や事例集を豊富に伝えます→「BやCなどいろいろ見たけどAが一番いいな、ここにしようかな」と確認したものが必要であれば次の購入という行動に繋がります。
X:購入1年後アニバーサリーキャンペーンで購入した人がSNSで書き込んでくれたらプレゼントなどのキャンペーンをする事で共有率を向上させます→「Aはいい会社だ。新居報告がてらSNSで会社のことにも触れよう」という具合に良い経験を周りの知人に周知してもらう事ができます。
このような流れに乗って顧客の購買を促進することで、次の顧客へとつなげていくことが可能になります。
D | E | C | A | X | |
状況・思考 |
子供が幼稚園に入った。そろそろ家を購入しようかな | なるほど。家を買うには考えることがいっぱいあるんだな。メルマガあるんだ。登録しておこう | 無料の相談会があるんだ。参加してみるか | BやCなどいろいろ見たけどAが一番いいな。ここにしようかな | Aはいい会社だ。新居報告がてらSNSで会社のことにも触れよう |
コンテンツ例 | 一戸建てとマンションとの比較記事「家を買うならいつがベスト?」などを用意 | SNSやブログで定期的に家に関する情報発信。次の行動に移らせるセミナーやCTAを用意 | デザインやサポート体制などより家に関する具体的なことがわかるぺージを設置 | 購入した人の生の声や事例集を自社サイトに置く | 購入1年後アニバーサリーキャンペーン。「SNSで書き込んでくれたらプレゼント」などのキャンペーンをする |
まとめ
現代ではAIDMAはもはや古いと言われることもありますが、人間の心理行動の本質は大きく変化することはありません。例えソーシャルメディアが出現したとしても根本の部分で大きく変化はしないでしょう。むしろ、基本的な行動心理が詰まっているので、参考にできる部分はたくさんあります。また、コンテンツマーケティング時代といえども、全ての人にDECAXが当てはまるかといえばそうではありません。AISASや他のフレームワークが当てはまる場合もあるでしょう。しかし、消費者の購買行動を考えない施策は継続してうまくいくことはありません。さまざまなフレームワークがある中で、自社にあったものでトライアンドエラーを繰り返し、継続して行っていくことが販売促進を行う上で重要になってきます。