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農産物のネット販売で売り上げを伸ばす4つの手法

2021年8月6日 (公開 :2020年8月21日)

農業は従来のように農協にだけお願いしておけばいいという時代は終わりつつあります。農協がない地域も拡大していますし、独自に販路を開拓することでブランディングに成功している農家も増えています。しかし、独自に販路を開拓することはとても大変なことです。そして販路開拓においてネット販売は欠かすことができません。

今回は農業におけるネット販促マーケティング手法について紹介します。

目次

 1 農産物の流通の状況

 2 農産物のネット販売で売り上げを伸ばす方法

 3 農産物は安心感が大切

 4 ネット販売のメリットと注意点

 5 まとめ

 

1 農産物の流通の状況

2015年の農林水産省の調査では、農家の収入が上がれば上がるほど、ECサイト利用者が高い傾向にあります。農業で売上を上げていこうと考えた場合、ネット販売は欠かせないツールとなっていることがわかります。

もう一つ興味深いデータがあります。2018年の農林水産省の調査によれば、農産物の流通は実に92%が直接販売となっており、宅配を含む通販での販売はたったの8%しかありません。しかし、2020年には世界的なコロナ禍もあり、外出自粛によって通販事業者の売り上げは軒並み伸びています。小売店での買い物をできるだけ自粛している層もおり、農産物の通販量も増加傾向にあることは容易に想像できるでしょう。ネット販売はまだまだブルーオーシャンであり、チャンスが広がっていることがわかります。

 

2 農産物のネット販売で売り上げを伸ばす方法

農作物のネット販売を進めるにあたり、売上を伸ばすために必要なマーケティングポイントを4つご説明します。

A オウンドメディア

農業に限らず全てのネット販売において共通しているポイントがホームページなどオウンドメディアです。オウンドメディアが必要な理由は2つあります。1つは農作物の差別化のためです。スーパーで野菜を購入する際に、どのようなことを確認するでしょうか。ほとんどのスーパーで表示されているのが価格と生産地です。同じ野菜が並んでいた場合、消費者はその二つの情報を見比べて購入します。しかしネット販売の場合、現物である野菜を実際に見ることができないため、購買行動を決めるためにはもっと多くの情報が必要になります。その情報のソースとなりうるのがオウンドメディアなのです。他社と差別化するための情報をオウンドメディアに掲載し、販売促進する必要があります。

もう1つの理由は、信頼関係構築のためです。小売店で購入する場合、現物を見て購入できるので、新鮮かどうか美味しそうかどうかを自分で選ぶことができました。しかし、ネット販売では写真でしか判別ができません。しかも野菜の販売は1つ1つ個別に撮影するということはまずありません。代表的な写真を撮り、それを参考に購入するのみです。本当に美味しい野菜を届けてくれるのかどうかは信頼が必要です。その信頼関係を築くためのツールとして生産者のこと、農産物のことを表現したオウンドメディアが必要なのです。

農業のEC

B ストーリーテーリング

オウンドメディアを活用する際に意識していただきたいポイントがストーリーテーリングです。ストーリーテーリングとは、自身のストーリーや想いを表現し共感を呼んで売上げにつなげるマーケティング手法です。ストーリーテーリングのポイントは3つあります。

1つ目は詳細な自己紹介を書くことです。商品である農産物のストーリーは生産者自身のストーリーと密接に関わってきます。生産者自身が農業を始めたきっかけはなんだったのか、どのような思いで農産物を作っているのかがストーリーとなります。生産する際にどのような点を工夫し、何が大変でどんなところに特徴があるのかなどまとめてみましょう。農産物が地域の特産物として有名な場合などは、地域の紹介を入れても良いかもしれません。

ストーリーは人や地域の歴史です。時系列でまとめるのも良いですし、テーマ史としてまとめるのも良いでしょう。全く同じ人生、全く同じ考え方などあり得ません。ストーリーテーリング手法を使うことでそれが差別化につながります。

2つ目は、ストーリーテーリングの成功の鍵として「共感」が重要になります。現物を確認することのできないネット販売では、購買意思決定のために、信頼関係構築が必要になります。生産者自身のありのままのストーリーを晒し、農業へ対する思いや活動への共感を生むことで販売につながります。

 

C SNSとの連携

共感を広げる装置として最も有効なマーケティングツールがSNSです。オウンドメディアを立ち上げ、ストーリーをまとめてコンテンツ化したとしても、それが目に止まらなければ購買にはつながりません。マーケティングプロセスのAISASの最初のA、「Attention(認知)」が必要です。情報の拡散においてSNSが効果としてもコストとしても効率的なのです。

SNSを運用するにあたってメディア連携は必須です。SNSと一口に言っても、フェイスブック、ツイッター、インスタグラム、ラインなど実に多様なものがあります。それぞれに利用者層が異なり、リーチするターゲットが変わります。そのため、SNSごとの特徴を理解しておくことは重要です。

オウンドメディアに発信した情報をSNSと連携して発信することはもちろん、SNSへターゲットに応じた発信を定期的に行いましょう。SNSはアカウントがあるだけでは拡散効果は低いままです。フォロワーを増やすことで届く人を増やすことができるため、定期配信を行うこと、SNS内でのコミュニケーションを活発化させていきましょう。

SNSを拡散させるために重要なのは、共感を呼ぶコンテンツの配信です。共感されることでシェアされるようになります。また、実際に農産物を購買した人が共感したり感動したりした場合もシェアしてもらえることがあります。実際の購入者の声なので信頼性が高まり、さらなる新規顧客を呼び込むことにもつながります。もし、自分が生産した農産物についてのレビューを見かけたら積極的にSNSでシェアするようにしましょう。

 

D メルマガの利用

ネット販売をする上でとても大切なのが顧客管理です。特に農産物のマーケティングをする上では、購買者をリピーター化させることが最大のミッションになります。リピーターの数が増えれば増えるほど売り上げの計算が立つようになり、経営の安定化を図ることができるからです。

顧客管理とリピーター化をする上で活用できるツールがメルマガです。いつ、誰がどのくらいの量を買ったのか、データを把握することで次の購買のタイミングが見えてくるようになります。そのタイミングでメルマガを配信するのです。メルマガの中身を深く読んでくれるにこしたことはないですが、もし読まれなくとも「そういえば、そろそろ」と思い出してもらえれば御の字です。

メルマガ配信をする上でのポイントは2つあります。1つはメールアドレスの取得です。メルマガを配信するためにはメールアドレスが必須です。ECの場合、顧客とのやりとりは主にメールになるため、メールアドレスはしっかりと控えておきましょう。他にも、名刺交換した取引先や友人など管理リストに入れておくことでメルマガの効果が高まります。

もう1つのポイントとしてコンテンツのクオリティが挙げられます。メールの開封率が上がれば上がるほど、コンバージョン率(購買につながる率)も高くなります。メールを開封してもらうためには、中身であるコンテンツが興味をそそるものであること、セール情報など有益な情報であることが大切です。

 

3 農産物は安心感が大切

近年、農産物の流通において重要視されてきているのがトレーサビリティです。つまり、産地や生産者の情報を開示することがスタンダードになってきました。その背景には2011年に起こった東日本大震災があります。当時、放射能の影響などがあったことから、安心安全な食べ物を求める市民の声が高まり、それが流通やマーケティングに大きな影響を与えました。農産物は直接口に入るものであり、健康に直接的に関わりがあるので消費者の目線は非常にシビアです。産地だけでなく、農薬の有無や有機栽培かどうかにこだわりを持つ消費者も増えてきています。つまり、どのように農産物に付加価値をつけるのか、それをどのようにして伝えるのかが重要になっているのです

なぜその農家で買う必要があるのか、その答えに納得感があれば消費者は購入します。その理由は価格であったり、栽培方法であったり、実に様々です。EC販売のマーケティングとしては、どのようなニーズに対応するのか、どんな人をターゲットにするかを決める必要があります。そのためには購入者に安心感を与えるためにどのような情報を開示すべきかを検討し、発信していきましょう。

 農産物のEC

4 ネット販売のメリットと注意点

楽天市場にアマゾンなど、ネット販売は生活に欠かせないインフラ産業となってきています。ネット販売のメリットはやはり一般の流通に比べて中間マージンが少なくて済むという点です。販売量も努力に比例して伸びていく傾向にありますので、収入に反映されやすいという点もメリットとして挙げられます。

その一方で注意点もあります。例えば、農産物の販売は許可など不要なのですが、加工品販売は商品によって保健所の許可が必要になります。さらに、生産物を全て出荷してくれる農協と異なり在庫を抱えることになるので、在庫を保管する倉庫施設や、在庫管理も必要となります。また、箱に詰めて伝票を書いて発送する業務も発生します。発送業務は量が増えるとかなり大変な作業になるため、人員拡大を図ったり外注したりする必要があるでしょう。

 

5 まとめ

農産物をネット販売して売り上げを伸ばすためには、今あるインターネットツールを活用する必要があります。オウンドメディアやSNS、コンテンツマーケティング、マーケティングオートメーションなどをフルに活用し、工夫と差別化を図りましょう。ネット販売の鍵を握るのは「信頼」「共感」の二つで、この二つをどのようにして獲得するかが重要です。農産物は直接口に入るものでもあるので、何を伝えれば安心感を持ってもらうことができるのかを考えましょう。ネット販売を考えているのであれば、まずはメディアの作成とコンテンツの制作から始めてみてはいかがでしょうか。

 

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Topics: コンテンツマーケティング, その他業界, 集客

デジタルブログ編集部
執筆 デジタルブログ編集部

ゼクシィネットなどの数多くのメディア制作に携わった後、Investing.com日本版編集長。現在はデジタルマーケティング統括責任者。メディアで培ったノウハウを生かし、HubSpotを中心としたデジタルマーケティング、コンテンツマーケティング、インサイドセールスなどを中心に執筆。HubSpot導入コンサルタントとしても活動中。