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海外の製造業における、集客のための最新マーケティング3事例

2021年8月6日 (公開 :2020年10月9日)

本稿では製造業における最新マーケティング事例をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

📚 目次
  1.  
  2.  1 Nestle「With/N」
  3.  2 Doller Shave Club
  4.     3 Casper
  5.     4 新たなビジネスを考えるときに重要なポイント
  6.    A.顧客接点
  7.            B.顧客視点
  8.     5 まとめ

 

Nestle「With/N」

世界最大級の食料品企業のNestleは、米国で今夏にローンチした健康管理アプリの「With/N」とのコラボをしました。米国では、健康管理が1つのブームになっており、Gallup調査によると現在アメリカ成人の19%がアプリで健康状態を日常的にチェックし、45%の人は健康アプリやデバイスの利用経験があると答えています。

このような環境の中で、With/Nは個人それぞれの健康状態や食事パターンに合わせて、どのような栄養を補給すべきなのかなど専門家の食事療法のコーチング、食事プランのレコメンド、継続するモチベーションのためのコンテンツを提供しています。With/Nでは、コーチングだけでなく、外出先の食事でも健康的な食事を促進するために地元のレストランをレコメンドしてくれる機能もあります。この中では、低脂肪・低カロリーのネスレの冷凍ブランド「LEAN CUISNE」のレコメンドもされます。

健康管理アプリを利用している層は、若年層を中心としており、ネスレは従来の冷凍食品などから敬遠しているこの層の攻略を狙ってのコラボと考えられます。まだ、アプリがどこまで浸透するかはわからないですが、Amazon Freshなどで自動注文ができるなどの機能も追加され、コロナの影響で今後拡大していく可能性があります。FMCGメーカーも現在デジタルとどのように融合していくのかが課題になっている中で、健康という軸に新たな顧客接点を作ることで、新規顧客層開拓を狙っている事例です。

 

Doller Shave Club

Doller Shave Clubとは、2012年に創業したカミソリ刃のサブスクリプションビジネスです。従来カミソリ市場は、P&G(ジレット)とEdgewell(シレック)の2強が市場を独占していました。そのため、カミソリのマーケティング施策は、小売店で棚をどのように独占するのかということが重要になっており、大量の広告費の投下や店内施策などが中心でした。

そこで登場したのが、Doller Shave Clubです。Doller Shave Clubは、2枚刃なら月5個で1ドル(別途郵送料2ドル)、4枚刃なら月4個で6ドルの料金で自宅に定期的に届けてくれるものです。Doller Shave Clubの大きな特徴は、D2C サービスということです。従来メーカーが小売を通してしか顧客との接点が作れませんでした。そのため、広告費や小売へのマージンなどコストが増大していました。しかし、Doller Shave Clubは、顧客がインターネットで直接申し込む事により、自宅に届けてくれるサービスのため、顧客と直接の接点を持てて、かつコストを抑えることができます。

また、従来のカミソリは、5枚刃や振動がつくなど高機能になっていく一方、価格もどんどん高くなっています。しかし、Doller Shave Clubは、このような余計な機能は必要なく、安く最低限の機能だけでいいという顧客のインサイトを理解し、安い価格で替刃を提供しています。

このようにプロダクトやサービスとして顧客体験を充実させるだけでなく、登録内容の変更や解約などをわかりやすくするなどのUIを整えていたり、ひげ剃りだけでなく、髭剃りクリームやヘアワックスなどのアップセル商品も提供したりして顧客満足度を高めるための施策を行っています。

それ以外に大きく注目された理由としては、他社がSNSなどを活用していないときにYoutubeで、無駄な高機能やTVCMなど顧客が思っている他社サービスへの批判動画を作成し、大きくバズを起こし、ユーザーを一気に300万人獲得したことなどがあります。2016年にはユニリーバに1000億円で買収されましたが、FMCGの商品においても顧客接点をどのように持つのか、顧客理解が重要なことがわかる事例です。

 

Casper

Casperは、2014年に創業したオンラインで販売するマットレスメーカーです。Casperの創業者5人は、従来のマットレス市場に大きく不満を抱えていました。たとえば、マットレスの種類が多すぎるから結局どれがいいかわからない、マットレスの営業が強烈すぎる、オプションが多すぎてよくわからない、デリバリーまでの手間が多いなどです。このような不満を解消するために、全く新しいコンセプトとしてCasperを創業しました。Casperのコンセプトは、マットレス商品は一つ、手頃な価格、家に直接デリバリーです。

従来、マットレスは選択肢が多すぎた結果、どれがいいかわからず結局購入しないなど購買ロスや顧客の不満につながっていました。このような現状に目をつけたCasperは、どんな姿勢で寝ても最もフィットするマットレスを調査し、商品を一つに絞り込みました。その結果、創業2年で100MUSD(約100億円強)の売上を上げることができました。

アメリカには現在9200ものマットレス店舗があります。これは、メーカーが在庫を保有しなくて済み、持ち運びが不便だからという理由がありました。その結果、余計なマージンや輸送費用、営業費用などがかかり価格を釣り上げるきっかけにもなっていました。そこでCasperは「Bed In a Box」という形で、マットレスを小さな冷蔵庫くらいの箱で持ち運べるようにしました。その結果、輸送コストを抑えたり、どんな家でも搬入するのに苦労せずに済んだりするなどのメリットを顧客に提供しました。またそれに加え、100日以内なら返品無料というオプションをつけ顧客の信頼感を勝ち取りました。このように顧客のインサイトを深く理解することで、顧客との関係性を築き大きく成功した事例です。

 

メーカーが新たなビジネスを考えるときに重要なポイント

海外の製造業のマーケティング事例をご紹介しましたが、最後に自社でマーケティング施策を検討する際に重要なポイントをご紹介します。

新たなビジネス

顧客接点

スマートフォンやSNSの普及などに伴い、顧客と企業の接点がより近くなってきています。従来、メーカーは、代理店や小売を通して販売していたため、直接顧客と接点を持つことが少なかったかもしれません。しかし、現在新たなビジネスを検討していく上で、メーカー側も直接顧客と接点を持つことが重要になってきています。

顧客と直接接点を持つことで、顧客がどのようなものに興味があるのか、顧客がどんなものを購入しているのかなどデータ分析を行うことができたり、顧客との関係性を築くことに繋がったりします。実際、メーカーだけでなく、ディズニーも自社で顧客と直接接点を持つために新しく自社の動画サービスを提供し始めました。顧客接点は、新たなサービスだけでなく、SNSなどからも始められます。どのように顧客との関係性を築いていくのかを検討することが重要です。

 

顧客視点

もう1点重要なポイントは、顧客視点です。今回ご紹介した事例はどれも顧客が日常的に感じていたけど、口に出していないニーズを拾い上げてビジネスを展開しているものです。このように、実はレッドオーシャン市場だと思っていても、角度を変えることでビジネスチャンスが眠っているかもしれません。そのときに重要なのは、顧客が普段どのように思っており、どのような課題があるのかを把握することです。

このような課題は、通常の調査等では見つかりづらく、行動観察や自身の日常からヒントが得られます。自社の課題を探すときにも実際に自分がユーザーの気持で検討してみることが重要です。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は海外のメーカーが取り組んでいる最新事例をご紹介しました。デジタルトランスフォーメーションなどが注目されている中で、メーカーも小売や代理店を通した関係性だけでなく、顧客と直接接点を持つことが求められています。また、常に企業視点ではなく、顧客がどのような課題を抱えているのかなど顧客視点を持つことが重要です。まずは自社の顧客がどのような不満を抱えているのかなどを検討してみてはいかがでしょうか。

Topics: 製造業, 集客

執筆 海野健

マーケティング支援会社のストラテジー部門に10年在籍。自動車、金融、FMCGなど多種な業種において、商品マーケティング戦略や商品コミュニケーション戦略開発、デジタルマーケティングを担当。また、東南アジア駐在経験があり、現地でのマーケティング案件に携わり、グローバル・マーケティングの知見も広い。