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海外ヘルスケア業界の最新デジタルマーケティング3事例

2021年8月6日 (公開 :2020年10月15日)

メンタルケアや遠隔医療などヘルスケアは現在ビジネスにおいて注目されているジャンルの一つです。本稿では、ヘルスケアにおいて海外で注目のビジネスに関してご紹介します。ぜひ参考にしてください。

📚 目次
  1.  
  2.  1 Care/of
  3.  2 Walgreen
  4.     3 One Medical
  5.     4 ビジネスの成功に向けてのポイント
            A パーソナライゼーション
  6.         B 顧客体験
  7.  5 まとめ
  8.  
 

 

Care/of

SpotifyやNetflixなどサブスクリプションサービスが日常に増えてきているかと思います。アメリカで現在注目を浴びているのが、サプリメントのサブスクリプションサービスです。日本でもサプリ市場は拡大してきていますが、アメリカにおいて、サプリ市場は800億ドル以上の大きな市場です。アメリカでは、スーパーやドラッグストアで様々な種類が大量に売られています。しかし、多くの消費者はどのサプリが自分に合うのかがわからず、様々なビタミンが含まれているマルチビタミンを購入するケースが多いです。しかし、実際には自身にあうサプリは個人の体格や生活環境に大きく影響します。そこに注目したのがCare/ofです。

Care/ofとは、個人それぞれにパーソナライゼーションされたサプリを定期的に届けてくれるサービスです。まずCare/ofに申し込むと、Quizに答えることになります。Quizでは、性別や体重などの基本情報からサプリメントをのむ目的などの簡単な設問に答えます。その設問をベースに顧客それぞれに最適なサプリメントを選択します。サプリにはそれぞれの効果が明記されており、どのサプリが欲しいのか選択することが出来ます。

どのサプリがほしいかを選択したら、後は一定期間定期的にサプリが送られてきます。サプリの送付される袋には、自分の名前や専用デザインなどここでもパーソライズがされます。その後、アプリを通して、服用リマインドや効果の報告などを通して、サプリの内容を更に適切にパーソナライズできます。

サプリという業界でも新たなビジネスモデルを活用して、ビジネスチャンスを広げています。鍵は、従来選択基準がなかったサプリというものに対して、個人の生活やモチベーションに合わせてパーソライズするということ。ヘルスケアにおいても顧客に対してパーソライズすることがより求められています。

 

Walgreen

ウォルグリーン(Walgreen)とは、アメリカで展開しているドラッグストアの一つです。ウォルグリーンなどのドラッグストアもより顧客体験を高めるためにストアアプリを経由して様々なサービスを提供しています。例えば、従来処方箋はドラッグストアの薬局スタンドに処方箋を提出し、10分近く待たないと薬が支給されませんでした。しかし、アプリ経由で処方箋のバーコードを読み込むだけで、処方箋データがドラッグストアに送信され、事前に薬が準備されピックアップするだけでよいといったことや自宅への宅配サービスなどを展開しています。その他、ドラッグストアで購入したサプリの履歴から同じような効果の商品をおすすめしたり、割引クーポンを発行したりするなど個人それぞれの行動にあわせてパーソナライズしています。

また、それ以外にウォールグリーンでは、Fine Care Nowというサービスを展開しています。Fine Care Nowでは、様々な医療サービスと連携しており、顧客により満足な顧客体験を提供しています。Fine Care Nowでは、患者が、「腹部」「痛みや熱」「耳・鼻・喉」などの症状別に選ぶことにより、近所の診療所のアポ、電話やビデオ通話を使ったテレヘルス、緊急を要する場合の救急対応などを行います。例えば、テレヘルス(遠隔医療サービス)の「MDライブ・ドクタービデオ・コール」は24時間対応であり、軽度の症状であれば、仕事終わりに自宅で医者に相談できるという利便性で人気です。サービスは拡大し続けており、メンタルヘルスや糖尿病などの慢性ケア管理に対応を始めています。このように、ウォルグリーンは顧客体験を高めることで医療サービスの中でのポジショニングを高めようとしています。

 

One Medical

One Medicalは、病院の体験を大きく変えるスタートアップであり、2020年に上場をはたしました。従来の病院では、診察を受けるまでの待ち時間が異常に長かったり、やっと診察が受けられたとしても診断時間が短く満足しないまま終わってしまったりするなどサービスが低いレベルにありました。これに対応したのが、One Medicalです。One Medicalは年会費149ドルの医療プラットフォームであり、従来は個人向けサービスでしたが、現在UberやAdobeなどの企業の福利厚生としても活用されています。One Medicalのサービスは、アプリ経由で24時間以内の診断予約、24時間対応のビデオ電話による問診、検診のリマインダーなどを一つのプラットフォームで展開します。

また、診察・治療予約を95%の時間通りに実施、医者一人あたりの患者数も従来の病院より35%減らし、一人あたりへの対応時間を増加させています。また、オンライン、オフラインでシームレスな体験を実現するために、治療履歴の確認やいつも飲んでいる処方箋の依頼などもアプリで行うことができます。今後他のサービスとの差別化を狙うために、従来読み込むことが困難といわれていた保険会社などの複雑な情報を集約し、個人それぞれの過去の治療履歴を集め、それぞれに特化したより良い治療の実現を目指しています

このように、新しい治療法などからの視点だけでなく、病院との顧客体験に注目することでビジネスを進めている事例です。

 

ヘルスケアにおけるビジネスの成功に向けてのポイント

ここまでアメリカで成功している海外事例を挙げてきましたが、最後にヘルスケアにおけるビジネスのトレンドをご紹介します。

成功のポイント

パーソナライゼーション 

従来のヘルスケアビジネスは、サービスを提供したり、商品などのプロダクト自体が重要視されていました。しかし、技術の進化やサービスの多様化により求められるものが変わってきました。そこで今重要になっているのが、患者それぞれに適した医療を提供するパーソナライゼーションです。患者それぞれによって、身体情報はもちろん生活環境や目指しているものも違います。ひとりそれぞれの状況を把握した上で、それに適したサービスを提供することがトレンドとなっています

パーソナライゼーションにおいて、重要なのはどのように顧客のデータを集めるかです。現在ウェアラブルデバイスなど様々な手法で顧客のヘルスケアデータを集められるようになっています。どのようにデータを集め、それによってどのようなサービスやプロダクトを提供できるのか検討してみてはいかがでしょうか。

 

顧客体験

上述したように、従来のヘルスケアはプロダクト重視でした。しかし、現在ヘルスケアにおいてもプロダクト自体から治療や体験だけでなく、どのようなユーザー体験を味わえるのかが重要となってきています。そこで今までの病院や治療経験などで感じていた不満やニーズを理解し、その課題を解決する事が新たなビジネスのきっかけになります。しかし、顧客の不満は調査などから抽出できません。そこで重要になってくるのが顧客の行動を体験し観察することです。観察を通して、顧客自体も気づいていないようなニーズを発見できる可能性があります。顧客のニーズを把握し、新たな顧客体験を目指してはいかがでしょうか。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。ヘルスケアビジネスが進んでいる海外のビジネス事例をご紹介しました。海外のビジネスのトレンドは、パーソナライゼーションと顧客体験です。プロダクトへの注力だけでなく、どのように顧客を理解し、どのような体験を提供するのかが重要です。まずは、自社の顧客にどのよう人がいるかを理解することから始めてはいかがでしょうか。

Topics: その他業界, デジタルマーケティング

執筆 海野健

マーケティング支援会社のストラテジー部門に10年在籍。自動車、金融、FMCGなど多種な業種において、商品マーケティング戦略や商品コミュニケーション戦略開発、デジタルマーケティングを担当。また、東南アジア駐在経験があり、現地でのマーケティング案件に携わり、グローバル・マーケティングの知見も広い。