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AIに欠かせないディープラーニングとは?海外事例に見るその現状。

2020年12月22日 (公開 :2020年9月14日)

AppleSiri 、Amazon Echoなどのスマートスピーカーやサービスのお問い合わせでもチャットボットが活用されるなど、AIを活用したサービスが注目を浴びています。しかし、実はAIの中で活用されている技術がディープラーニング(深層学習)なのです。本稿ではディープラーニングとは何か、海外でのディープラーニングの事例、活用するためのポイントをご紹介したいと思います。是非参考にしてください。

 

ディープラーニング(深層学習)とは?

AlphaGoというAIシステムがトッププロ棋士に勝利したといったことや、GoogleのAIが猫の概念を理解したというニュースをお聞きした方も多いと思いますが、このニュースで機能しているのがディープラーニングいう技術です。AIに注目を浴びやすいですが、このAIを機能させているのが深層学習です。

ディープラーニングとは、機械自身がデータから特徴を抽出しデータを認識する学習のことです。具体的にご説明すると、犬の画像と猫の画像を認識する場合、深層学習以前は、こちらから「これが犬です」「これが猫です」というルールをユーザー側が設定し、機械が認識するというものでした。しかし深層学習ではデータを渡しさえすれば、機械自身がこれは犬でこれが猫だと学習し、認識します。

このように深層学習は、人間に近い形で機械が学習することを可能にする技術です。実際深層学習の開発には人間の脳が参考になっています。人間の脳は様々な単純な反応をするニューロンが組み合わさることにより私達の毎日しているような複雑な行動を可能にしています。深層学習においても、単純な計算をするシステムを組み合わせることにより、複雑な認識を可能とした技術です。このようにデータを蓄積してそこから学習することにより、AIが様々なソリューションを提供することが可能となります。実際すでに私達の生活にも多く活用されています。つづいて実際に活用されている事例をご紹介します。

 

ディープラーニング(深層学習)活用事例

AI実際にディープラーニングを活用した事例をご紹介します。

Google画像検索

まずわかりやすいディープラーニングの例をご紹介します。画像を探して、Googleで画像検索をされた方も多いかと思います。Google画像検索の機能の一つに類似の画像を検索するというものがあります。この機能は、手元の画像をアップロードすることにより、類似画像を検索できるものです。画像をアップロードすると、その画像がどのようなワードで検索されているのか、どのような要素があるのかを分析(猫の場合、色、ポーズの特徴など)し、共通点がある画像をリストアップするというものです。このような作業が数秒の間に行われています。ディープラーニングは、利用すれば使用するほどシステムが学ぶものです。

Amazonチャットボット

最近多くのサイトでチャット形式でのお問い合わせが増えています。このチャット形式では人が対応するものではなく、AIや深層学習を活用したチャットボットによるものがあります。Amazonでも2020年にカスタマーサポートにチャットボットの導入実験をはじめました。Amazonが行うチャットボットでは、ユーザーのアカウント情報も分析した上で、人の手を介さずにユーザーからの要望に答えられることを目指しています。例えば、商品をキャンセルしたいというオーダーに対して、チャットボットはユーザーのアカウントにアクセスし、キャンセル対応が可能かを判断します。もし、チャットボットで対応できなければ、人間のカスタマーサポートへのフローも確立しています。このように人の手を介さずに85%の顧客対応をチャットボットで行い、約230億ドルの予算削減を目指しています。

ダイナミックプライシング

ダイナミックプライシングとは、需要や天気等の要因を分析することで価格を変動することです。例えば、航空券やホテルの料金などが代表的です。需要が高い時期には料金高くなり、オフシーズンになると料金が安くなる仕組みのことです。このようなダイナミックプライシングにもディープラーニングの技術が用いられ、様々な場所でも活用されています。例えば、スーパーでは、従来価格が変わらずに運用されていました。しかし、イスラエルのスタートアップWastelessを導入したスーパーでは、需要に応じて価格を変更します。例えば、1ドルの商品があった場合、もし一定期間売れなかったら99セントに値引きし、更に売れなかったら95セントに値引きするということを自動で行います。また、その他に天気や賞味期限など様々なファクターをベースに分析を行い最適な値段を割り出します。スペインのスーパーマーケットで導入した結果、食品廃棄が3分の1に減少し、売上が6.3%上がったそうです。

味覚の分析

最後に少し変わった事例をご紹介します。Gastrograph AIは食品や味覚を理解するAIです。味の感じ方は、地域、性別、喫煙歴など様々な要因で大きく変わります。そのため、新商品開発においてその地域やターゲットが本当に好む味覚を分析することが重要になってきます。Gastrograph AIはアプリを利用し、味覚に関するフレーバーを24項目から入力し、分析を行うことでターゲットが本当に好む味覚を予測することが出来ます。従来の消費者テストでは、今の商品の味の判断しかできませんでした。しかし、AIを活用することで好む味がどのようなものなのかという予測ができるということです。また、Gastrograph AIでは、最初のケースでは既存のデータと組み合わせて100人ほどのデータが必要になりますが、次第に10人程度のデータでも分析することが可能になってきます。実際に適用した事例としては、アメリカでクラフトビールの開発に活用され、発売するフィラデルフィアの人好みのIPA(インディア・ペールエールビールを開発することに成功したそうです。

 

ディープラーニング(深層学習)活用のポイント

このようにディープラーニングは私達の生活にすでに活用されており、今後更に開発が進むことで自動運転や遠隔医療などにも活用されます。最後にディープラーニングを活用する際のポイントをご紹介します。

解決したいポイントを明確にする

AIを導入する際によくある失敗として、AIを万能のツールだと思ってしまうことです。しかし、AIは導入すれば何でも解決できるわけではありません。導入する前に自社において課題になっていること、解決したいことが何なのかを明確にしましょう。例えば、「カスタマーサポートを最適化して予算削減をしたい」のであればチャットボット、「顧客体験を向上させたい」のであれば画像検索やダイナミックプライシングなどかもしれません。このように自社の課題によって導入するシステムや学習する内容が異なるため、自社がなぜ導入したいのかを明確にしましょう

スモールスタートから始める

ディープラーニングを導入するときくと、なんだかハードルが高いと思ってらっしゃる方もいるかと思います。しかし、デジタル・トランスフォーメーションが叫ばれている中で、どの企業にとっても欠かせない要素になってきます。その時に大事なのはスモールスタートから始めるという意識を持つことです。ご紹介したAmazonほどの大企業でも新しくチャットボットを導入する際は実証実験から始めています。そのためまずはスモールスタートからはじめて結果を見ながら改善して拡大していくことが有効です。このようにPDCAを回しながら、成功に繋げていくという意識をもち、まずは実験してみるという気持ちを有効にしましょう。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。ディープラーニングとは機械自身がデータを解析し、学習していく技術であり、スマートスピーカー、チャットボットなどを含めてすでに私達の生活の中で活用されています。また、今後自動運転や遠隔医療においても重要な役割を果たす技術として期待されています。もちろん、マーケティングでも大きな影響力を及ぼすようになってくるでしょう。ご興味ある方はまず自社の課題を洗い出し、ディープラーニングが活用できるか検討してみてはいかがでしょうか。

Topics: デジタルマーケティング

執筆 海野健

マーケティング支援会社のストラテジー部門に10年在籍。自動車、金融、FMCGなど多種な業種において、商品マーケティング戦略や商品コミュニケーション戦略開発、デジタルマーケティングを担当。また、東南アジア駐在経験があり、現地でのマーケティング案件に携わり、グローバル・マーケティングの知見も広い。