インターネットで消費者が様々な情報を集められるようになりました。その結果、消費者は病気になってもインターネットで病気について調べ、自分にあった病院を見つけるという行動が一般的になってきています。その結果、多くの病院で集患が大きく課題になっています。本稿では、海外の病院におけるデジタルマーケティング事例をご紹介します。
|
New York Presbyterian Hospital
New York Presbyterian Hospitalは動画マーケティングで大きく成功した事例の一つです。New York Presbyterian Hospitalは動画を通じて患者の不安や実際に病院での体験、医者や看護士がどのように対応してくれたのかなどを赤裸々に伝えました。病院にかかる患者は治療だけでなく、どのように医者や看護士が対応してくれるのかなど心配が山程あります。いくらホームページで明記していても、ホームページ上の文言だけでは伝わりきらない場合があります。しかし、動画の場合、患者の声や表情など多くの情報を伝えることで文言よりも数千倍の情報が伝えられるといいます。このように動画を活用することで言葉だけでは伝わらない、病院の雰囲気、医者の性格などを伝え、患者の不安を解消することに活用できます。
動画を活用する際に重要なのは、ストーリーテリングです。ただ情報を伝えるだけではなく、ストーリーを通して患者が抱く不安や自社がどのような信念があるのかなどを伝えます。ストーリーを通して伝えることで顧客の心に残り、より覚えやすくなったり、ロイヤルティーにもつながったりします。手法は、ある患者の物語やアニメーション、ブランドビデオなどさまざまです。何をメッセージとして伝えるのかだけではなく、自社のブランドイメージにあった手法などを検討しましょう。
Fisher-Titus
ウェブサイトは、未来に患者になりうる可能性がある人を獲得するための手段の一つです。Fisher-TitusはSEOで大きく成功した事例です。SEO対策を行なうことでウェブサイトアクセスが110%、ブログの読者が200%アップしました。Fisher-Titusが行ったSEO対策は大きく3つです。
1点目は、ホームページ上でのUXを向上することです。専門ごとに医師の検索をできるようにしたり、医師それぞれのページを作成し情報量を増やしたりするなどホームページを訪れた消費者が求めている情報をすぐにみつけやすいように対応しました。2つ目は、ブログを充実したことです。将来の患者がどのような情報を求めているのかを分析した上で、動画、ブログを含めて様々な形式でコンテンツを充実しました。また、コンテンツはブログだけでなく、どのような症例があるのか、どのような医者が対応できるのかなど病院内の情報と連動させました。ブログへのアクセスが増え、実際のアクションにもつながるようにしたことにより、実際の患者数も増えました。3点目は、モバイルフレンドリーになったということです。消費者の行動は大きく変化してきており、PCからではなく、知りたい情報をすぐにアクセスできるようにスマホからのアクセスが増えています。このような消費者の行動に合わせた導線設計を行いました。
顧客のインサイトを分析することで今まで提示していなかった情報が実は顧客にとって価値があるということがわかるかもしれません。また、顧客の行動を分析することでただの情報を提示していただけのホームページではなく、集患にもつながるWEBサイトを形成できるかもしれません。このように病院においても顧客を分析した上で施策を検討することが重要になってきています。
Carilion Clinic
Carilion Clinicは、乳がんの認知率、診断率を上げるためにマーケティングキャンペーンを行いました。マーケティングキャンペーンは、「#YESMAMM」です。このキャンペーンでは、乳がんについて疑問や質問、もしくはマンモグラフィーを添付して消費者がTwitterでハッシュタグ#YESMAMMと一緒につぶやくと、Clinicから返信で回答が返ってくるものです。このキャンペーンは消費者が質問を聞くだけでなく、ハッシュタグを追うだけでも知識を得ることができます。また、乳がんの認知率を高めるだけでなく、病院のWEBサイトへのアクセス数も高めることにもつながりました。
ホームページやブログなどで一方的に情報を発信するだけでなく、このようにハッシュタグを用いたり、SNSを活用したりすることで患者候補との双方向のコミュニケーションを取ることが可能になります。それにより、診察前から患者の不安を和らげることができ、ロイヤルティーを高められるようになりました。
病院のマーケティングにおいてのポイント
海外での病院のマーケティング事例に関してご紹介してまいりました。このように病院でも従来とは異なりマーケティングが求められるようになってきています。最後に病院でのマーケティングを行なう時のポイントをご紹介します。
コンテンツマーケティング
ご紹介してきたように病気の疑いがある患者は、すぐに病院に行くのではなくまずはインターネットで調べるというように行動が変化してきています。従来通りの近所や紹介だけでなく、WEB上でどのように顧客を捉えるのかが大きな課題になってきています。そのための手法の一つがコンテンツマーケティングです。コンテンツマーケティングを行なうためには、自院の強みはなにか、患者が求めているものは何かなどを把握しましょう。また、患者がどのような媒体をみているのか、どのように情報を伝えると効率がいいのかなどを分析し、ブログ、動画などの手法の検討を行いましょう。
双方向のコミュニケーション
従来のマーケティング手法はテレビCM、チラシなど一方通行のものがほとんどでした。しかし、SNSが登場したことで企業と消費者の双方向のコミュニケーションが可能になってきました。従来病院は権威というイメージもあったかもしれません。しかし、現代は、より透明性や身近さが求められています。透明性や身近さを作り出すために効果的なのがSNSです。SNSで患者との距離感を縮め、自院の情報を提供することを検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。病院もマーケティングを行うことが求められはじめています。その際重要なのは、患者になるべき消費者を理解、分析することです。どのような情報を欲しており、どのように病院選びをしているのかなどの行動を把握した上で最も適している施策を検討しましょう。