日本においても超高齢化社会が問題になってから久しいです。労働力減少はもちろん、今後団塊の世代が75以上の高齢者になっていく上で、家族がどのように介護と向き合っていくのか、社会としてどのような福祉サービスを提供できるのかというのが大きな課題になっています。日本でも対策が検討されていますが、海外においても同様に大きく注目されている業種の一つです。本稿では、海外での介護や社会福祉に関連したビジネス事例をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
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超高齢化社会に求められているものとは?
2020年時点で65歳以上が30%といわれ、今後2065年頃までには約4人に一人が75歳以上になるとも言われています。今後このように超高齢化社会が進む中で介護や医療にどのように対処していくのかが大きな課題となっています。このように超高齢化社会へ対応するビジネスの領域としては、大きく3種類に分かれます。
・介護・医療
高齢者のためのより安全で、より生活しやすい環境を提供するための、遠隔医療や介護者とのマッチング、睡眠・運動などの管理、支援、介護業務などのビジネス領域。
・コミュニティ
孤独死などが問題になっている中で、デジタルコミュニティやSNSなど関係性を築いていくためのビジネス領域。
・生活の質向上
自動運転などでの移動範囲の拡大や外出体験、高齢者向けの金融サービスなど普段の生活の質を向上させるためのビジネス領域。
現在大手企業からスタートアップまでがどのようにこの領域であらたなサービス、ビジネスを立ち上げられるのかを検討しています。ここで海外で展開しているビジネス事例をご紹介します。
介護・医療分野
Care.com
Care.comは、ホームヘルパーとのマッチングサイトを運営しています。従来、Craigslistなどの掲示板でのマッチングを検討している顧客も多かったですが、業者を通しての紹介が多く、マージンがかかることにより費用が高くなったり、ヘルパーに入る費用が少なくなったり、情報が明確でないことからミスマッチが起きてもいました。
Care.comはマッチングサイトを作成することにより、従来の中間業者からのマージンを除いた適正価格でのサービスの提供など需要と供給のバランスを整えるような取り組みをしました。また、口コミやサービス適用者を評価する仕組みを取り入れることによりミスマッチングをなくすのにも貢献しています。20カ国以上で展開されており、介護だけでなく、家事手伝いやペットケアの領域にも拡大しています。
Honor
Honorは、介護のUberと呼ばれるようなサービスです。高齢者やその家族は、必要に応じてアプリでホームヘルパーを呼ぶことができます。ヘルパー側は、アプリ上で高齢者のプロフィールやケア内容を確認した上で応対できるため、細かいレベルでのすり合わせができるためどちらにとっても満足度が高いサービスになっています。
また、Honorは自社でオリエンや研修を提供したり、自社でホームヘルパーを雇用し、市場よりも高い給与を提供したり、ホームヘルパー企業をネットワーク化するなどより安定し、質が高い人材を提供できるような工夫もしています。
Apple Watch
Apple Watchも高齢者向けの機能を盛り込んでいます。例えば、転倒検出機能ではスマートウォッチをつけている本人が転倒したときに緊急連絡先を表示し、一分間操作がなかった場合は自動で発信されます。また、心電図の操作や脈拍も感知し、異常があれば通知する事ができます。
従来他の専用デバイスなどはありましたが、高齢者はつけなかったり、本当に転んでも隠したりするようなことがありました。しかし、Apple Watchのように時計一体型で検知することで異常へすぐに対処する事ができるようになっています。また、Apple Watchもビジネスマンや健康意識が高い層だけでなく、新たな顧客層の開拓にも寄与しています。
コミュニティ
Carely
Carelyは、離れて施設で暮らす高齢者と家族が気軽にコミュニケーションや様子がわかるアプリです。アプリ上で、高齢者の施設で暮らしている様子やメッセージ、他の家族が訪問したスケジュールなど簡単にコミュニケーションをとることができます。
生活の質向上
Cake
Cakeは、終活に向けてのプロセスを検討するためのプラットフォームを提供しています。日本でも終活という言葉が流行しましたが、アメリカで終活に向けての準備をしている人は4人に1人しかいません。それは遺書をどうするのか、葬式はどうするのか、いま運用しているSNSをどうするのかなど検討することが多岐にわたってしまい、複雑だからです。しかし、高齢者にとって終わりを意識することは心配事をなくし、今の生活の質をより高めてくれることにつながります。そのようなニーズからCakeでは、「ヘルスケア」「法的・経済的決定」「お葬式のプラン」「自分がどのような記憶として残りたいのか」という4つのカテゴリーから終活を考えられるプラットフォームを提供しました。
お葬式をどのように行ってほしいのか、SNSを残しておいてほしいのかなどを終活に向けてのプランニングを行うことができます。プランニングした内容は、アップロードされ、家族などに簡単に共有できるようにもなっています。また、保険企業や金融関連企業ともパートナシップを結ぶことでより充実した内容をプランニングし、顧客の開拓を行っています。
まとめ
超高齢化社会は今後日本において避けられない問題です。そのような状況でただ高齢者をターゲットとするのではなく、高齢者が本当に求めている課題を理解し解決することが求められています。新たなサービスやビジネスを検討するときも顧客理解からまず始めることがおすすめです。今どんな悩みがあるのか、潜在的に存在しているニーズを考えることから始めてみてはいかがでしょうか?