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世界のマーケッターが注目する音声マーケティングの手法や事例とは?

2021年8月6日 (公開 :2020年9月18日)

AppleのSiriなどの音声検索を利用したことがありますか?近年Google EchoやAmazon Alexaなどのスマートスピーカーを保有している家庭も増えてきたり、人前で音声検索をするのに抵抗がなくなってきたりしているかと思います。また、Spotifyなどのサービスでも音声コンテンツの拡充に力を入れているというニュースも増えてきています。本稿では、今後テキスト、動画に続くメディアとして注目を浴びている音声マーケティングについてご紹介します。是非参考にしてください。

📚 目次

 

 

音声マーケティングとは?

音声マーケティングとは、音声を活用したマーケティング手段です。大きくは音声検索を活用したマーケティングと音声広告があります。従来ラジオがマスメディアとして活用されていましたが、テレビの登場により音声メディアへの関心が減少していました。しかし、なぜいま音声コンテンツが注目されているのか、大きく3つの理由があります。

A.スマートスピーカーの登場

1点目は、2010年のAppleのSiri導入から2014年のAmazon EchoやGoogle Homeなどのスマートスピーカーが登場したことです。従来スピーカーは音楽やラジオなどを聞くだけのものでしたが、AI技術が発展したことで双方向のコミュニケーションが可能になりました。スマートスピーカーも初期は音楽を聞くという用途で使われている事が多かったですが、近年は音声検索など様々な用途で利用している層が増えてきています。例えば、アメリカでスマートスピーカーを利用している72%が日常のルーティンの一つとして利用しています(出典:グーグルインサイト調査)。また、リサーチ会社モフェットナサンソンの調査によると、2022年には50%近くが音声を通した買い物を行うというデータもあります。このようにスマートスピーカーの登場により音声がマーケティングの一部としても活用され始めています。

B.音声プラットフォームサービスの登場

2点目は、音声プラットフォームサービスの登場です。従来音楽を聞くには曲やアルバムを購入して聞くか、ラジオを聞くかという手段でした。しかし、CDでは購入した後に企業からコミュニケーションすることが難しいし、ラジオもマス向けにしかコミュニケーションができないという課題がありました。しかし、SpotifyやPodcastサービスなどが登場したことで、音楽やコンテンツを提供するとともに、顧客向けに広告を配信するプラットフォームが登場しました。例えば、日本では8%とまだ普及初期ですが、グローバルで見ると月一回にPodcastを聞く人が中国で53%、カナダ36%、米国で26%とかなりの浸透率です(出典:Podcast Report掲載のGlobal Web Index 2018 。一部は2019版より)。このように、音声コンテンツを提供するプラットフォームが拡大したことが一つの要因です。

C.ユーザビリティ

3点目は、ユーザビリティの点です。聞く側、制作する側に音楽やテキストコンテンツよりもユーザビリティがいいです。動画もテキストもコンテンツを見るためには集中力が必要になります。しかし、音声コンテンツの場合は、仕事をしながら、通勤をしながらなど「ながら」消費することができるため、気軽に利用できます。また、コンテンツ制作側も最低限スマートフォンがあれば録音するだけでコンテンツを制作できるため、編集や執筆などが必要な動画やテキストコンテンツに比べると手間が少ないというメリットがあります

音声マーケティングの手法

それでは具体的に音声マーケティングにはどのような手法があるのかをご紹介します。

ポッドキャスト

A.音声広告

音声広告とは、言葉のとおり音声だけの広告です。従来はラジオでの広告が主流でしたが、SpotifyやAudibleなどの音声プラットフォームサービスが普及するのに従い、個人がそれぞれのデバイスでコンテンツを聞くようになり始めた結果、注目をされています。実際アメリカでPodcast広告の市場は毎年拡大しており、コロナ禍にもかかわらず2020年度は前年比14.7%で成長し、10億ドルの大台に近づいています(出典:IAB Podcast Advertising Revenue Report)。このように音声広告市場は現在大きく拡大しています。

現在普及している音声広告の特徴は、大きく2点あります。1点目は、狙っている顧客ターゲティングができるということです。バナー広告など現在データを活用して狙っているターゲットをピンポイントに表示できます。音声広告でも同様に聞いているコンテンツ、音楽などからターゲットを絞り込んで広告を配信できます。2点目は、他の広告と比較して消費者受けがいい点です。Adobeの調査によると38%の人が音声広告のほうが、TVCM広告やデジタル広告の他の広告と違って押し付けがましくないと感じています。また、39%の人が音声広告は興味を惹くと答えています。

このように、ブランドエンゲージメントの視点から音声広告は新たなメディアの手段の一つになると注目を浴びています。

B.音声コンテンツ

先日Amazonもポッドキャスト市場に参戦することを発表したり、Spotifyがポッドキャスト企業の買収をしたり、オバマ元大統領夫人のミシェル・オバマと番組制作を発表したり、音声コンテンツ市場が広がってきています。Appleのポッドキャストだけでも75万以上のプログラムがあり、2400万以上のコンテンツがあるといいます。音声コンテンツはジャンルを選ばず、ニュース、ドラマ、学習コンテンツと幅広くあります。そのような中で、多くのメディア企業だけでなく、マーケティングの手段としてコンテンツの利用が広まっているのです。音声コンテンツを活用している事例としてLego社の事例をご紹介します。

Lego「Duplo Stories Skill」

Lego社は、Amazonと協業して2−5才向けにDuplo Stories Skillという音声コンテンツを提供しました。Duplo Stories Skillは、子供向けにブロックの組み立てや想像をかきたてるようなストーリーです。しかし、ただのストーリーではなく、子供の応答によって複数のシナリオが用意されているインタラクティブなコンテンツであり、子供がブロックを制作する時間も想定しています。このように商品の使用体験価値やブランドのロイヤルティーを高めるために音声コンテンツを活用し始めている企業も増えてきています。

C.音声アシスト

最後にご紹介するのは、音声アシストです。スマートスピーカーの技術が発展することにより、音声アシスタントの機能も拡充したことで、買い物など様々な行動が可能になっています。アメリカでは、すでに58%の人が近所の情報などの検索に音声アシスタントを使ったり、22%の人が音声で何かをすでに購入したりした事があると答えています(出典:BrightLocal)。音声アシスタントが普及していく中で、音声アシスタントを活用したサービスを開発している企業も増えてきています。音声アシスタントは、より簡便なサービスを提供することで顧客との関係性構築などに活用できます。音声アシスタントを活用した実例をご紹介します。

ドミノ・ピザ

ドミノ・ピザはワンクリック注文などテクノロジーの導入に力を入れていますが、そのドミノ・ピザが導入したのが音声でピザを注文できるサービスです。スマートスピーカーに「ドミノと話す」というだけで簡単にオーダーができるというものです。このドミノによる施策は新たなイノベーションなサービスを提供したということで、PR効果があるとともに、新たな顧客とのエンゲージメントのきっかけにもなっています。

Kayak

ホテルや旅行予約サイトのKayakは旅行やホテルの予約を音声検索で行えるサービスを提供しています。旅行に行きたいが、色んなウェブサイトを回ったり、比較したりするのが面倒だという消費者のニーズを把握したKayakは、声をかけるだけで簡単に検索や予約ができるサービスを提供することで、何かをしながらでも旅行の予約ができるようになりました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。SEOのテキストコンテンツや動画コンテンツが普及している一方で、現在注目を浴びているのが、音声マーケティングです。音声マーケティングは、何かをしながらでも聞けるし、作成するのが簡単という利便性から今後日本でも拡大していくと考えられます。また、広告の点でも従来のものと比較してもブランド好意度に寄与したり、新たなユーザーエクスペリエンスを提供できるというメリットがあります。いままで音声はラジオというような印象がなかった方もまずはポッドキャストなどを体験してみて、自社のコンテンツを検討してみてはいかがでしょうか。

 

Topics: デジタルマーケティング

執筆 海野健

マーケティング支援会社のストラテジー部門に10年在籍。自動車、金融、FMCGなど多種な業種において、商品マーケティング戦略や商品コミュニケーション戦略開発、デジタルマーケティングを担当。また、東南アジア駐在経験があり、現地でのマーケティング案件に携わり、グローバル・マーケティングの知見も広い。